おかしな奴 [1963年 東映(東京)]

おかしな奴

[スタッフ]
脚本 鈴木尚之
監督 沢島忠
企画 園田実彦
 〃 吉田達
撮影 藤井静
照明 原田政重
録音 小松忠之
音楽 佐藤勝
美術 北川弘
[出演者]
三遊亭歌笑 渥美清
おひさ 三田佳子
春藤ふじ子 南田洋子
歌笑の父 高水為吉 加藤嘉
母 やす 清川虹子
藤田三吉 田中邦衛
兄弟子 しゃもじ 佐藤慶
三遊亭金楽師匠 石山健二郎
円八師匠 十朱久雄
あんま宅悦 渡辺篤
とん平 春風亭柳朝
 (白黒 シネマスコープ 110分)
自ら「珍顔」を名乗り、戦後の落語界で爆発的な人気を誇った風変わりな落語家、三遊亭歌笑(1917〜50)の短い人生を描いた東映作品。歌笑を演じた渥美清にとって、この映画は『拝啓天皇陛下様』(1963)やアフリカを舞台にした『ブワナ・トシの歌』(1965)と並んで「寅さん」以前の代表作と言えるだろう。監督の沢島忠は東映の中でも新しい世代に属し、中村錦之助(後に萬屋錦之介)主演の時代劇「一心太助シリーズ」(1958〜63)など、フットワークの軽い演出で知られる。実在の歌笑はナンセンスな笑いを得意としたことで知られたが、沢島監督はあえてこの落語家の生涯
を、滑稽な笑いばかりでなく、夫婦愛を軸にそこはかとない哀しみを込めて描いている。やがて名作『飢餓海峡』(1964)を執筆することになる脚本家鈴木尚之や、数々の黒澤明作品に音楽を提供した作曲家佐藤勝など、スタッフ陣の豪華さでも注目に値するだろう。