今年の夏は暑すぎました。
少しでも涼しく感じていただけるように「お化け」ご用意しました。
『北越雪譜』より、
幽霊・ようかい・未確認生物・ばちあたりのお話を紹介しています。
すこしコワ~イをご覧ください。
ミニ企画分類「ようかい」
『北越雪譜』のお話「北高和尚」より
魚沼郡雲洞村にある雲洞庵は、越後の有名な寺の一つである。
十三世通天和尚は、上杉謙信の親戚で特にりっぱな人であったという。
上杉景勝もこの寺で学んだ。
大きな寺なので、古文書や宝物が沢山ある。
その中に火車落としの袈裟というのがある。
その袈裟には、血のあとのようなものが見えるが、これには訳がある。
天正のころ雲洞庵は、とても偉くりっぱな十世北高和尚がつとめていた。
冬、寺の近くの村で死者がでたが、雪が降り続いて吹雪が止まらなかった。
そのため葬式ができなかった。
三、四日待っても晴れないので、無理に葬式をすることにした。
雲洞庵から北高和尚を迎えて、棺を出した。
途中、雪道を急に猛烈な嵐が吹き、黒雲が空に広がり、
闇夜のようになった。
その時、火の玉がどことなく飛んできて棺をめがけて覆った。
火の中には二股の尾を持つ大猫がいて、牙を鳴らし、鼻息荒く、棺を奪おうとした。
人々は慌てて逃げ惑う…。「フーーーー!!」猫がうなる
北高和尚は恐れず、呪文を唱え…
一喝し、鉄の如意で飛びかかってきた大猫の頭を一撃した。
大猫の頭から血が吹き出し、和尚の衣を汚した。大猫はすぐ逃げ去った。
その後、天候も快復し無事葬式も終了した。と古い寺の記録に残っている。
この時、北高和尚が来ていた衣は、「火車落としの法衣」といって
今に伝わっている。
「火車(かしゃ)」生前悪行した者を運ぶ火の車。
この話では、野辺のおくりの時の雨風によって
棺を吹き飛ばされることをいう。